交通事故の治療で6ヶ月通院した場合の慰謝料の「相場」とは?

交通事故のケガで治療が長くかかっている場合、

「慰謝料はもらえるのか」
「慰謝料がもらえたとして、いくらぐらいもらえるのか」

など、不安や心配な気持ちが大きくなっていませんか。

交通事故でケガをして入院もしくは通院した場合には、入院や通院した期間に応じて、慰謝料が支払われることになります。

もっとも、慰謝料の金額の決め方には3つの基準があり、どの基準が使われるかによって、もらえる慰謝料の金額は大きく変わってくる可能性があります。

少しでも多くの慰謝料をもらうためには、3つの基準について知り、一番高額となる可能性がある基準で慰謝料の金額を決める必要があります。

この記事では、

  • 交通事故の慰謝料とは
  • 交通事故の慰謝料の金額の決め方とは
  • 交通事故の治療で6ヶ月通院したときに請求できる慰謝料の相場とは
  • 一番高額となる可能性がある基準を使うためには

について、弁護士が詳しく解説します。

交通事故によってケガを負った方、ケガの慰謝料について不安がある方、ぜひ参考にしてください。

交通事故の慰謝料とは

交通事故の慰謝料とは、交通事故により生じた精神的苦痛に対して支払われるお金のことをいいます。

交通事故によって、ケガをしたり、死亡したりすると、被害者は苦痛や不安、恐怖を感じます。その被害者が受けた精神的な苦痛を慰めるために、加害者が被害者に対して支払うお金が、交通事故における慰謝料となります。

そして、交通事故の賠償金(加害者が被害者に支払うお金)全体でみると、慰謝料はその中の一部に含まれることになります。

交通事故で請求できる慰謝料の種類とは

交通事故で請求できる慰謝料の種類は、 入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類です。

(1)入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、病院への入院や通院を強いられたことによって生じた、精神的損害に対する慰謝料のことをいいます。

(2)後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、事故により後遺障害が残ってしまった場合に、後遺障害が残ってしまったことによって生じた、精神的損害に対する慰謝料のことをいいます。

どういった後遺障害が残ったのか、後遺障害の内容に応じて金額が決められることになります。

(3)死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故の被害者が死亡した場合に、残された家族に支払われる慰謝料のことをいいます。
被害者が一家の大黒柱だったのか、母親や配偶者だったのか、など被害者の家族構成に応じて金額が決められることになります。

交通事故の入通院慰謝料の金額の決め方とは

以下では、一般的に目安が公表されている自賠責の基準、弁護士の基準での入通院慰謝料の金額の決め方について説明します。

(1)自賠責の基準

自賠責保険基準は、「自動車損害賠償保障法」と、これを受けて内閣総理大臣と国土交通大臣が定めた「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」において、相当程度具体的に決められています。

1日当り4300円×実治療日数×2で算出しますが、実治療日数×2が総治療日数を上回る場合には、総治療日数を限度とします。
実治療日数とは実際に入通院した日数をいい、総治療日数とは初診から治療を終了した日までの総日数をいいます。

※自賠責保険の支払基準改正により、2020年4月1日以降に発生した事故については、入通院慰謝料は日額4300円に変更となりました。なお、2020年3月31日以前に発生した事故については、従前のとおり、入通院慰謝料は日額4200円のままとなります。

※治療日数の注意点

  • あんま・マッサージ・指圧師や鍼灸師の施術については、実治療日数のまま計算します。
  • 長管骨の骨折等によるギプス装着期間は、実診療日数として計算します。
  • 医師等の最終治療日の診断書に、「継続」「転医」「中止」との記載がある場合には、総治療日数に7を加算します。(あんま・マッサージ・指圧師や鍼灸師の場合は除く)。
  • 同一日に2つ以上の異なる医療機関で診療を受けた場合でも、治療日数は1日として計算します。

(2)弁護士の基準

弁護士の基準は、過去の裁判に基づく基準のことをいい、『青本』と『赤い本』に載っている基準が実務で広く参考にされています。

ここでは『赤い本』の基準をもとにご説明することとします。

次の2つの表を見てみましょう(なお、次の表から導き出される金額は、あくまでも「基準額」であり、この金額が必ずしも裁判で認められるとは限りませんので、ご注意ください)。

原則、別表1の表を参考に慰謝料を決めることになります。
ただし、むち打ち症や打撲などのケガの場合には、別表2の表を参考に慰謝料を決めることになります。

別表Ⅰ(原則)                       (単位:万円)

別表Ⅱ(むち打ち症で他覚症状がない場合)           (単位:万円)

交通事故の治療で6ヶ月通院したときに請求できる慰謝料の相場とは

ここで、交通事故の治療で6ヶ月通院したとして、どのような計算でいくらの慰謝料(相場)となるかを説明します。

例えば、「事故日から治療終了まで6ヶ月通院したケース(入院はなし)で、実際の通院日は70日」として計算してみます。

(1)自賠責の基準の場合

自賠責の基準の場合、原則、1日4300円が支払われることになります。

そして、治療日数については、総治療期間ではなく、実治療日数×2(140日(70日×2))が原則として採用されます(実治療日数×2が総治療日数を上回る場合は、総治療日数)。

その日数で計算すると、入通院慰謝料は次のとおりです。

4300円×140日(70日×2)=60万2000円

なお、自賠責保険の賠償額には上限があることに注意が必要です。
後遺障害ではない「傷害による損害」については、慰謝料や休業損害等の各損害の項目の合計の上限が120万円となっています。

(2)弁護士の基準の場合

弁護士の基準の場合には、上で紹介した別表1と別表2を参考にします。
別表の見方としては、次に説明する通りです。

入院のみで通院を行っていない方は、「入院」欄にある入院期間に対応する「→A」欄の金額が入院慰謝料の基準額となります。
通院のみで入院を行っていない方は、「通院」欄にある通院期間に対応する「↓B」欄の金額が通院慰謝料の基準額となります。
入院後に通院を行った方であれば、「入院」欄にある入院期間と「通院」欄にある通院期間が交差する欄の金額が、入通院慰謝料の基準額となります。

ここでいう通院期間とは、総治療期間のことをいい、6ヶ月通院した場合には、「6ヶ月」が通院期間にあたります。

むち打ちや打撲を除くケガの場合には、別表1を使います。
通院「6月」のころを見ると、 116万円となっています。

一方、ケガがむち打ちや打撲などであった場合には、別表2を使います。 通院「6月」のところを見ると、 89万円となっています。

弁護士の基準を使うには

弁護士の基準を使うためには、弁護士が慰謝料を請求する必要があります。

確かに、弁護士の基準は公表されていますので、被害者自身が弁護士の基準で慰謝料を計算し、支払いを求めることも可能なようにも思えますが、任意保険会社が被害者本人に対して弁護士の基準での支払いに応じることはほとんどありません。

しかし、弁護士が、訴訟による解決も辞さない姿勢で粘り強く交渉することで、任意保険会社が裁判所基準に近い賠償額で示談に応じる可能性を高めることができるのです。

弁護士に依頼することで受けるメリット

弁護士に依頼することで他に受けることができるメリットは次のとおりです。

• 弁護士であれば、具体的事情をうかがって、慰謝料以外の損害賠償の項目についてももれなく請求することができる。
• 後遺症が残りそうな場合には、適切な後遺障害等級認定を受けることが重要となるが、後遺障害等級認定についてもアドバイスを受けることができる。
• 交通事故について弁護士に交渉を任せることで、交渉にかかる負担やストレスを軽減し、被害者やその家族が自分の生活を取り戻すことに集中する時間を確保することができる。

弁護士に依頼して損害賠償額が多少増額しても、弁護士費用を支払えば結局損をするのでは?と心配な方もいらっしゃるかもしれませんが、「弁護士費用特約」を利用すれば、保険会社が弁護士費用を負担してくれますので(一般的に300万円まで)、費用負担の心配は不要です。

まずは、自身の保険に「弁護士費用特約」が付帯しているかをチェックしましょう。付帯している場合は、補償範囲内で保険会社が弁護士費用を支払ってくれますので、弁護士費用の心配をする必要はありません(等級や保険料が上がることはありません)。

自身の保険に弁護士費用特約が付帯していない場合であっても、同居している家族(親族)の保険や、火災保険などに付帯している弁護士費用特約が利用できるケースもあります。詳しくは、各保険会社に確認するようにしてください。

【まとめ】交通事故で6ヶ月通院したときの慰謝料相場は89万~116万円

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 交通事故の慰謝料とは、交通事故により生じた精神的苦痛に対して支払われるお金のこと。
  • 交通事故で請求できる慰謝料の種類は、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類。
  • 交通事故の慰謝料は、どのような形で慰謝料が支払われるかによって、自賠責の基準、任意保険の基準、弁護士の基準の3つの基準で決めることになり、一般的に、自賠責の基準<任意保険の基準<弁護士の基準で高額となる。
  • 入通院慰謝料については、基本的に、被害者のケガの症状、入通院期間などによって画一的に金額が決められることになる。
  • たとえば、「事故日から治療終了まで6ヶ月通院したケース(入院はなし)で、実際の通院日は70日」の場合には、自賠責の基準の入通院慰謝料は60万2000円、弁護士の基準の入通院慰謝料は116万円(むち打ちや打撲の場合には89万円)となる。
  • 弁護士の基準が使われるためには、弁護士が慰謝料を請求する必要がある。

その他、

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この記事の監修弁護士
中西 博亮
弁護士 中西 博亮

弁護士は敷居が高く,相談するのは気後れすると感じられている方も多いのではないでしょうか。私もそのようなイメージを抱いていました。しかし,そのようなことはありません。弁護士は皆,困った方々の手助けをしたいと考えております。弁護士に相談することが紛争解決のための第一歩です。ぜひ気軽に弁護士に相談してみてください。私も弁護士として皆さまのお悩みの解決のために全力を尽くします。

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